●病態
・出生後早期に発症する多呼吸を主訴とした新生児急性呼吸障害である.病態は肺液の排泄遅延を主とした胎外環境への適応の遅れによる.
・発症のリスクファクターとしては,帝王切開,仮死,母体への鎮静,未熟性などがある.
・症状として多呼吸(60回/分以上),呻吟,陥没呼吸,鼻翼呼吸などの非特異的な呼吸症状を呈する.
・予後良好な疾患であり数日以内に軽快することが多いが,ほかの原因による呼吸障害との鑑別や合併症の出現に注意が必要である.
●治療方針
A.呼吸管理
呼吸性アシドーシスを伴う場合,経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal-CPAP:nasal continuous positive airway pressure)は非侵襲的呼吸サポートとして効果的である.肺胞の虚脱を防ぎ拡張させることは,肺胞表面積を増加させ,肺液の吸収を促す効果もある.
低酸素血症を認める場合,酸素投与を行う.酸素投与は肺血管を拡張させ,肺血流を増加させる効果もあるため,肺液の吸収促進の効果もある.ただし高濃度酸素投与は避けたい.空気でのnasal-CPAPも低酸素血症の改善に有用である.
B.新しい呼吸管理
高流量経鼻酸素療法(HFNC:high-flow nasal cannula)は,加温加湿することで高流量の酸素投与を可能としたものであり,酸素投与と比べて二酸化炭素の洗い出し効果などの優位性がある.nasal-CPAPと比べて患者のストレスを軽減でき,カニューレの装着も簡便であり,管理上の利点もある.
C.全身管理
生後早期の循環動態の変化として動脈管,肺血管抵抗への配慮は重要となる.過剰な水分投与は避けるが,過度の水分制限を行うのではなく,適切な肺循環を維持するのに適切な水分投与を行うことが重要である.
循環作動薬は必要としないことが多いが,適切な血圧を維持し肺循環の早期の確立を目指すことは重要である.利尿