●病態
・さまざまな要因により出生後に肺血管抵抗が低下せず,胎児期の肺高血圧状態が続くことで卵円孔または動脈管を介して右左短絡を呈し,重篤な低酸素血症をきたす.
・発症率は1,000出生に対し1.9人と推定されており,多くは正期産児もしくは過期産児に生じる.
・100%酸素吸入と適切な人工呼吸管理が行われても低酸素血症が持続し,動脈管レベルでの右左短絡があり酸素飽和度の上下肢差を認める場合に本症を疑う.
・心エコー検査で先天性心疾患がなく,高度の肺高血圧の所見(卵円孔や動脈管レベルでの右左短絡など)を認める.
・肺実質疾患や肺血管床減少などで肺血管抵抗が下がらず肺動脈圧の絶対値が高い型(胎便吸引症候群,呼吸窮迫症候群,横隔膜ヘルニアなど)と,循環不全による体血圧低下で相対的に肺動脈圧が高い型(新生児仮死,敗血症,一過性心筋虚血など)がある.
・母体の薬物服用(非ステロイド性抗炎症薬,セロトニン再取り込み阻害薬など)とPPHNの関連が報告されている.
・適切な治療にもかかわらず,1~2週間以内に症状が改善しない場合には,肺胞毛細血管異形成やサーファクタント蛋白異常症などを鑑別する.
・早産児にPPHNを発症することがあり,遷延性前期破水や羊水過少が危険因子である.
・総肺静脈還流異常は心内構造異常がなく,鑑別が難しいため注意を要する.
●治療方針
PPHNの原因となる疾患の治療を十分に行い,人工呼吸管理,鎮静,強心昇圧薬,肺血管拡張薬などを組み合わせて体血圧を適切に維持し,肺血管抵抗を下げる呼吸循環管理を目指す.「肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)」では,肺血管拡張療法の第1選択薬は吸入一酸化窒素(iNO)であり,iNOが使用できない場合にほかの肺血管拡張薬を考慮する.
A.人工呼吸管理
PPHNにおける呼吸管理の基本は適切な肺容量を保ちながら酸素化を改善させることであり,呼吸器は高頻
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