診療支援
治療

早産児の動脈管開存症
patent ductus arteriosus in the preterm infants
豊島勝昭
(神奈川県立こども医療センター新生児科・部長)

●病態

・動脈管は正期産児では生後1~2日で閉鎖するが,早産・低体重児では閉鎖しづらい.

・動脈管開存状態で肺血管抵抗が低下すると,動脈管を介して体循環から肺循環へ左右短絡が生じ,肺血流量増加・体血流量減少の血行動態になる.

・在胎週数が早い早産児ほど,未熟児動脈管開存症を発症する.新生児臨床研究ネットワーク(NRN-J)によると未熟児動脈管開存症の頻度は極低出生体重児の34%,超低出生体重児の48%である.

・未熟児動脈管開存症は肺血流量増加に伴う心不全症状,体血流量減少に伴う全身臓器の虚血症状を生じる.脳出血,肺出血,壊死性腸炎,腎不全などの重篤な合併症につながりうる.

・2010年に「根拠と総意に基づく未熟児動脈管開存症治療ガイドライン(J-PreP)」が公開され,医療情報サービスMinds(マインズ)のウェブサイトに33の推奨,科学的根拠,総意形成の過程,初学者向けガイドライン解説を全掲載している.

●治療方針

 初期症状には拡張期血圧の低下,bounding pulse(脈圧の増大),心雑音,心尖拍動,血中二酸化炭素の上昇,尿量減少,頻脈などがある.肺出血などの重篤な合併症が生じる前の治療が望まれる.

 動脈管が自然閉鎖せず,症状を発現しうる早産児に対して,インドメタシンやイブプロフェンなどのシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬による薬物療法を施行する.COX阻害薬で動脈管が閉鎖しない場合や有害事象が大きい場合に,動脈管結紮手術の適応を検討する.

 症状発現の予測や重症度評価には心エコー検査が有用である.動脈管の径と血流波形,左肺動脈の拡張期血流増加,左房・左室の拡大,腎動脈の拡張期血流逆転所見などの所見が重要視される.

A.全身管理

 肺血管抵抗低下や体血管抵抗上昇は動脈管開存症の増悪因子となる.酸素の動脈管収縮作用は早産児ほど弱い.肺血管抵抗を低下する高酸素血症,低二酸化炭素血症の

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?