診療支援
治療

新生児の嘔吐
vomiting in newborn
塚本桂子
(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター新生児科・医長)

治療のポイント

・発症時期と吐物の性状,下血・腹部膨満・腹水などの随伴する症状の有無により,疑うべき疾患が異なる.

・鑑別すべき疾患のなかには,治療の緊急度が高い外科的疾患も含まれるため,全身状態と腹部膨満の程度,吐血・血便といった随伴症状の有無などのすみやかな評価が重要である.

・初期対応・管理としては,外科的疾患では消化管の減圧と輸液管理を行う.

・内科的疾患では,感染症を疑う場合は培養提出後のすみやかな抗菌薬全身投与,新生児・乳児消化管アレルギーを疑う場合は母乳栄養あるいは加水分解乳の使用,代謝内分泌疾患が疑われる場合は緊急でマススクリーニングを提出し,専門機関にコンサルトのうえ確定診断を急ぐ必要がある.

●病態

・嘔吐は,新生児では比較的よくみられる症状の1つである(表1).健常な新生児でもしばしば認められる.

・病的嘔吐の原因診断のためには,病歴や症状の観察が重要である.

 a)妊娠分娩経過〔羊水過多・過少,母体の投薬歴(硫酸マグネシウム)〕

 b)発症時期

 c)回数,量(頻回,多量の場合は病的嘔吐と判断する)

 d)吐物の性状(生理的な場合は消化乳や羊水・胃液様,胆汁様,血性の場合は病的)

 e)随伴症状〔腹部膨満(消化管閉鎖),吐血・下血・腹水(壊死性腸炎,中腸軸捻転),全身状態不良(消化管穿孔,感染症)〕

・確定診断するためには,①一般検査(血液検査,生化学検査,電解質,血液ガス分析検査),②腹部X線写真検査,消化管造影検査,③腹部超音波検査(腹水・腫瘤の有無,腸管壁肥厚,蠕動運動の状態,臓器血流)などの一般的な検査のほか,疑われる疾患や随伴症状により特殊検査を追加する.

・低血糖や高乳酸血症などを認め,代謝疾患が疑われる場合は,タンデムマススクリーニング検査やアミノ酸分析,有機酸分析を行う.

・血性嘔吐の場合は,凝固機能検査を追加する.

・髄膜炎,敗血症などの全身感染症を否定できない

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