●病態
A.概念
・新生児壊死性腸炎(NEC)は,超低出生体重児に発症する死亡率が高い炎症性腸疾患である.多くは生後3~12日以内に発症し,広範囲の腸管壊死をきたす.
・原因としては未熟性が最も重要で,腸管運動,腸管吸収能,腸管バリアー機能,腸管免疫のすべてにおける未熟性がNECの発症および増悪の原因となっている.これらの腸管粘膜の防御機構の破綻は,循環不全,低酸素血症,低体温,人工乳,細菌感染などが大きな因子であると考えられている.
B.診断
・NECの診断としては1978年にBellにより提唱された診断基準と重症度分類が用いられている(表1図).初発症状は哺乳力の低下に加えて,活気の低下,腹部膨満,低体温もしくは発熱,多呼吸,頻脈など新生児の感染徴候が認められる.進行すると腹膜炎症状や敗血症性ショックの状態に陥る.
・鑑別診断としては限局性腸管穿孔(FIP:focal intestinal perforation)や胎便関連性腸閉塞症(MRI:meconium related ileus)による腸管穿孔があげられる.
・FIPは組織学的に壊死性腸炎とは異なる限局性の腸管穿孔で臨床像も異なり,予後は比較的良好である.MRIは腹部膨満や胎便排泄遅延を特徴とする機能的腸閉塞で,microcolonや回腸末端に胎便貯留がみられるなどの特徴がある.穿孔例ではNECと同様の外科的処置が必要となり,予後は不良なものが多い.
●治療方針
発症の初期には絶食と抗菌薬投与による保存的治療を開始するが,全身状態の悪化,腹満の増強などの腸閉塞症状,穿孔性腹膜炎をきたした場合には早期の外科的介入が必要となる.緊急開腹され,穿孔部および壊死腸管の範囲の同定後,壊死腸管より口側での人工肛門造設(小腸ストーマ)と壊死腸管の切除が行われる.
発症からの時間と壊死腸管の範囲により外科治療に反応する例も少なくないが,広範囲