診療支援
治療

新生児貧血
neonatal anemia
川瀬泰浩
(東邦大学新生児学・准教授)

●病態

・新生児貧血の主な原因は,失血または出血や溶血によるもの,造血機能の低下によるものである.出生時の失血(出血)の主な原因として,常位胎盤早期剥離や胎児-母体間輸血などの産科的合併症や帽状腱膜下血腫,頭蓋内出血などの分娩外傷によるものが多く,ショック症状を呈する.

・慢性的な失血の原因としては,NICU入院児などにおける頻回の採血によることが多い.溶血による貧血では,貧血よりも早発性黄疸として発症するものが多く,黄疸に対する治療が主体となる.

・造血機能低下は,いわゆる新生児の生理的貧血の原因で,造血機能が不十分なために起こる.早産であればあるほど顕著にみられ,特に採血の頻度が高い早産児では貧血の程度が高くなる.

●治療方針

 出生時の貧血などの急性の貧血に対しては,基本的にショックに対する治療を含めた原疾患の治療とともに輸血が主体となる.早産児の慢性期における未熟児貧血に対しては,輸血,遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)の投与が行われる.鉄剤投与に関しては,日本新生児成育医学会より「新生児に対する鉄剤投与のガイドライン2017」が示されているが,早産児に関しては2003年刊行の「早産児に対する鉄剤投与のガイドライン」で示された投与方法が継承された.

A.赤血球輸血

 厚生労働省「血液製剤の使用指針」(2017年)の「Ⅶ新生児・小児に対する輸血療法」では,生後28日~4か月の早産児が想定されている.日本輸血・細胞治療学会による「科学的根拠に基づいた小児輸血のガイドライン」(2017年)によると,新生児では制限輸血が推奨され,急性期を過ぎ状態の安定した児ではヘモグロビン値7g/dLを赤血球輸血のトリガー値としているが,基礎疾患や病態を考慮したトリガー値はエキスパートオピニオンを基にしたガイドラインを参照するとしている.

Px処方例

赤血球液-LR 1回10~20mL/

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