診療支援
治療

性染色体異常症
sex chromosome abnormalities
岡本伸彦
(大阪母子医療センター遺伝診療科・主任部長)

 代表的な性染色体異常について述べる.

A.Turner症候群

 代表的な性染色体異常として,Turner(ターナー)症候群(TS)がある.TSの罹患率は2,000~3,000人に1人の割合である.

 一般女性核型は46,XXであるが,TSでは45,Xとなる.X染色体短腕部分欠失,モザイク型,リングXなどさまざまな核型のバリエーションが存在する.X短腕に座位するSHOX遺伝子が低身長と関係する.低身長以外の症状として,大動脈縮窄症などの先天性心疾患,翼状頸や外反肘などの身体的特徴,馬蹄腎などの腎異常,滲出性中耳炎,甲状腺機能異常症,原発性無月経,不妊症などがある.精神発達の大きな遅れはないが,空間認知などに問題をもつことがある.

 低身長に対しては成長ホルモン補充療法の適応がある.先天性心疾患に対しては外科治療が必要な場合がある.原発性無月経に対しては女性ホルモンの補充療法が必要となる.

B.Klinefelter症候群

 Klinefelter(クラインフェルター)症候群(KS)は,男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで生じる.47,XXYの核型が代表的である.

 性腺機能低下不全を主病態としている.高身長,四肢細長,思春期発来遅延,無精子症などを主徴とする.思春期以降,男性ホルモンが不足すると骨粗鬆症,筋力低下,女性化乳房などの症状を認める場合がある.

 男性ホルモン分泌不全に対しては,テストステロン補充療法が行われる.不妊に対する根本的治療法はないが,顕微授精などで挙児を得ることが可能な場合がある.精子数が極端に少なくても,顕微鏡下精巣内精子回収術(micro-TESE:micro-dissection testicular sperm extraction)で精子を得ることができる場合がある.

 KSでは糖尿病,甲状腺機能低下症,男性乳癌などの罹患率が一般より高くなる.KSでは

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