診療支援
治療

Ehlers-Danlos症候群
Ehlers-Danlos syndrome
和田敬仁
(京都大学大学院医療倫理学・遺伝医療学・准教授)

●病態

・Ehlers-Danlos(エーラス・ダンロス)症候群(EDS)は,皮膚,関節,血管,内臓などの結合組織成分であるコラーゲンの産生や成熟にかかわる蛋白質をコードする遺伝子の変異により発症し,Marfan(マルファン)症候群(MS)やLoeys-Dietz(ロイス・ディーツ)症候群(LDS)とともに結合組織の脆弱性を病態とする遺伝性疾患である.指定難病(168)および小児慢性特定疾病(31)に指定されている.

・国際分類(2017)では13病型に分類されている(日本エーラスダンロス症候群協会ウェブサイト参照).主要病型は,古典型,関節可動型,血管型,後側弯型,多発関節弛緩型,皮膚弛緩型の6種類である.発生頻度は全病型合わせて,5,000人に1人と推定される.これらのうち,血管型の遺伝子検査(COL3A1遺伝子)は保険収載されている.

・主要症状には,皮膚の過伸展や脆弱性(傷が治りにくい),関節の過伸展,過可動性や弛緩性(脱臼しやすい),動脈解離・瘤・破裂や内臓(肺,子宮や腸管など)の破裂がある.突然死の家族歴には注意が必要である(各病型の詳細は,成書を参考にされたい).症状は家族内でも幅があり,また非典型例も多く,遺伝学的検査が保険収載されているMSやLDSとの鑑別も考慮する.

●治療方針

 対症療法が中心である.特に血管型では発症が死に直結する可能性があり,侵襲的な検査(カテーテルなど)や治療(観血的手術など)は可能な限り回避する必要がある.血管型におけるβ遮断薬セリプロロールの動脈解離・破裂予防効果,筋拘縮型の巨大皮下血腫に対するデスモプレシン点鼻療法の有効性も報告されているが,いずれも保険外診療である.

■専門医へのコンサルト

・遺伝性疾患であり,また多臓器疾患でもあり専門性が要求され,遺伝子診療部門(臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー)や複数診療科と連携をとることが望ま

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?