診療支援
治療

ムコ多糖症
mucopolysaccharidosis(MPS)
小林博司
(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター遺伝子治療研究部・小児科・准教授)

Ⅰ.ムコ多糖症(MPS:mucopolysaccharidosis)

●病態

・先天的酵素異常によりグリコサミノグリカン(ムコ多糖)が過剰蓄積することで発症.原因酵素別にⅠ~Ⅸ型に分類され(Ⅴ,Ⅷ欠番),共通症候は粗な顔貌,肝脾腫,心弁膜症,反復感染,骨変形,気道狭窄など.中枢神経症状はⅢ型の全例,Ⅰ,Ⅱ,Ⅶ型の重症型にみられる.

・診断は尿中グリコサミノグリカン分析(検査会社SRL),白血球・線維芽細胞の酵素活性(Ⅰ,Ⅱ型はSRL)による.

●治療方針

 根治療法としては欠損酵素を定期的に補充するか,造血幹細胞移植により自己産生させる.

A.酵素補充療法

 Ⅰ,Ⅱ,Ⅳ,Ⅵ型で保険適用.安全性は高いが生涯必要.

 週1回,点滴静注.初回は原則入院.蛋白製剤なのでアレルギーに注意(「薬剤アレルギー」).導入期は投与速度を厳守.

1.Ⅰ型

Px処方例

アウドラザイム注 1回0.58mg/kg 週1回 10μg/kg/時から開始 15分ごとに速度を上げて1時間後から200μg/kg/時以下で点滴静注 全体で2~3時間かける

2.Ⅱ型

Px処方例

エラプレース注 1回0.5mg/kg 週1回 開始0~15分:8mL/時,15~30分:16mL/時,30~45分:24mL/時,45~60分:32mL/時,60~180分:40mL/時 全体で1~3時間かけて点滴静注

3.Ⅳ型

Px処方例

ビミジム注 1回2mg/kg 週1回 体重25kg未満:薬液総量100mL 投与開始15分まで3mL/時 以降3mL/時ずつ速度を上げ90分以降は36mL/時,体重25kg以上:薬液総量250mL 投与開始15分まで6mL/時 以降15分ごとに6mL/時ずつ速度を上げ90分以降は72mL/時 全体で4時間以上かけて点滴静注

4.Ⅵ型

Px処方例

ナグラザイム注 1回1mg/kg 週1回 体重20kg未満:初めの1時間は3mL/時(

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