Ⅰ.葉酸代謝異常
●病態
・先天性葉酸吸収不全,グルタミン酸ホルムイミノトランスフェラーゼ欠損症,メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素欠損症などが主な疾患であり,運動発達遅滞,けいれんなど中枢神経症状を呈する.
・先天性葉酸吸収不全では巨赤芽球性貧血,免疫不全,遷延性下痢なども呈する.
●治療方針
先天性葉酸吸収不全に対しては大量の葉酸(最大1日60mg)を経口投与するか,フォリン酸(5-ホルミルテトラヒドロ葉酸)を筋注(1日1.5~7.5mg)する治療が行われる.グルタミン酸ホルムイミノトランスフェラーゼ欠損症では,葉酸治療の効果は定まっていない.
メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素欠損症に対しては早期からのベタイン開始の効果が認められ,追加でメチオニンと葉酸の投与が試みられている.
Ⅱ.ビオチン代謝異常
●病態
・栄養性ビオチン欠乏症のほか,ビオチン代謝異常としてホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症とビオチニダーゼ欠損症があり,両者はマルチプルカルボキシラーゼ欠損症と総称される.
・複数のカルボキシラーゼの低下を反映したアシドーシスや特有の皮膚症状(難治性湿疹や脱毛など)と,尿中の異常有機酸代謝産物の排出が特徴である.中枢神経症状も呈する.
●治療方針
大量のビオチン経口または静脈内投与(1日10~50mg)を行う.
Ⅲ.ビタミンB12代謝異常
●病態
・トランスコバラミン欠損症などコバラミン(Cbl)吸収障害および転送障害のほかに,多彩な病因からなる細胞内コバラミン代謝異常がある.コバラミンは細胞内代謝によりアデノシルコバラミンとメチルコバラミンの2つの最終産物となるが,それぞれの欠乏症状が出現する.
・病因の部位と程度に応じて軽度から重度の巨赤芽球性貧血,ホモシスチン尿症(ホモシスチン尿症2型),メチルマロン酸血症などを呈する.
●治療方針
コバラミンの非経口投与を行う.初期治療として,ヒドロキソコバ
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