診療支援
治療

下垂体機能低下症
hypopituitarism
伊達木澄人
(長崎大学小児科学・准教授)

治療のポイント

・下垂体機能低下症では,各症例によって障害を受けるホルモンの組み合わせは異なる.そのため,どのホルモンが障害を受けているか治療前に把握することが重要である.

・副腎皮質刺激ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの分泌不全がある場合,必ず十分にステロイドの補充を行ってから甲状腺ホルモンの補充を行う.

・副腎皮質刺激ホルモン分泌不全がある場合,発熱,嘔吐などのストレス時にはヒドロコルチゾン維持量の2~3倍量あるいは50~100mg/m2/日の内服,注射が必要である.

●病態

・成長ホルモン(GH),甲状腺刺激ホルモン(TSH),副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)プロラクチンの下垂体前葉ホルモンと後葉ホルモンである抗利尿ホルモン(ADH)のいずれかが単独あるいはいくつかの組み合わせで産生,分泌低下をきたした状態である.

・発症時期から,先天性と後天性に大別される.先天性の成因として,かつては骨盤位分娩による分娩外傷に起因するinvisible stalkを伴った症例が多かったが,近年,分娩様式の変遷により減少傾向にある.その他の成因は不明なことが多いが,一部に下垂体発生・分化にかかわる遺伝子の異常や中枢神経系の異常に伴う例が含まれる.後天性の成因では脳腫瘍,特に下垂体近傍腫瘍(頭蓋咽頭腫,胚細胞腫,神経膠腫など)によるものが多い.視床下部-下垂体系への直接侵襲だけでなく,外科的手術,放射線照射や化学療法の合併症としても起こりうる.

●治療方針

 治療の基本は,不足しているホルモンの補充である.治療前にそれぞれのホルモン基礎値,分泌負荷試験にてどのホルモンの分泌が障害されているか確認する必要がある.

A.GH分泌不全

 GHの補充は,GH分泌不全性低身長症に準じて治療を行う.治療開始・継続基準についての詳細は各ガイドライン,診断の手引きを参照され

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