診療支援
治療

抗利尿ホルモン不適切分泌症候群
syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone(SIADH)
高澤 啓
(東京医科歯科大学発生発達病態学分野・学内講師)

●病態

・抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)は低浸透圧血症にもかかわらず,ADHであるアルギニンバソプレシン(AVP)分泌が抑制されず持続することで,希釈性低ナトリウム血症をきたす病態である.

・中枢神経系疾患,肺疾患,薬剤などさまざまな要因により生じうるが,腎AVP受容体の機能獲得変異による遺伝性の病態も確認されている.

・臨床的には,腎からの水・電解質の過剰喪失による循環血漿量の減少(脱水)を伴う中枢性塩喪失症候群(CSWS:cerebral salt wasting syndrome)との鑑別が,治療方針の決定においても重要である.

・診断は,厚生労働省間脳下垂体機能障害に関する調査研究班による診断基準に準拠する.

●治療方針

 治療の基本は原疾患の治療と水分制限である.CSWSの場合,水分制限により症状が増悪するため注意が必要である.脳浮腫による神経症状が出現している症候性SIADHでは,低Na血症の是正には緊急を要する.

A.非症候性かつ血清Na>120mEq/Lの場合

 1日の総水分摂取量を水分維持量の1/2,あるいは尿量+不感蒸泄量(乳児30mL/kg/日,学童20mL/kg/日)程度にする.無症候性SIADHは水分制限のみで治療可能なことが多いが,慢性期(低Na発症48時間以上経過)であっても急速なNa補正により浸透圧性脱髄症候群を生じる危険性があるため,血清Na上昇は0.5~1mEq/L/時かつ10mEq/L/日を超えないようにする.

B.症候性および血清Na<120mEq/Lの場合

 水制限に加え,3%高張食塩液を症状が改善するまで点滴静注する.症候性では2時間ごと,非症候性でも4時間ごとに血清Naを確認する.

Px処方例 血清Naを急速に上げる必要がある場合には➊に加え➋を併用する.

➊3%食塩液(10%塩化ナトリウム注を希釈して作製) 0.5~2.0mL/kg/

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