診療支援
治療

ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症
nutritional rickets and hypocalcemia due to vitamin D deficiency
荻原康子
(東京都立小児総合医療センター内分泌・代謝科)

●病態

・ビタミンDは骨・カルシウム代謝において重要な栄養素の1つである.欠乏すると骨の石灰化障害や腸管でのカルシウムの吸収低下が起こる結果,それぞれくる病や低カルシウム血症を引き起こす.診断に関しては,「ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き」(日本小児内分泌学会)を参照されたい.

・ビタミンDは体内で合成することができないため,食物由来のビタミンD2・ビタミンD3および紫外線によって皮膚で合成されるビタミンD3を利用している.いずれも肝臓と腎臓を経由し25位と1α位が水酸化されることによって活性型ビタミンDとなり,その作用を発揮する.

・リスク因子はビタミンDの摂取不足(完全母乳,アレルギーなどによる食事制限/偏食,日光曝露不足など)と吸収不良(胆汁うっ滞性疾患,慢性下痢など)に分けられる.また母体のビタミンD欠乏も新生児期・乳児期早期において重要なリスク因子であるため,合わせて確認しておく.

●治療方針

 治療の第一はビタミンDが欠乏することとなった原因の解除であるが,臨床症状が顕在化している場合や顕在化する可能性が高いと考えられる場合は,活性型ビタミンDの内服を併せて行う.

 ビタミンDの充足状態を評価するには貯蔵型である半減期の長い25水酸化ビタミンD〔25(OH)D〕を測定するが,25(OH)Dの値とくる病・低カルシウム血症の有無は必ずしも相関してはいないため,血清ALP・PTH,尿中Ca/Crなどの生化学的パラメーターやリスク因子の改善状況も加味して治療開始の必要性について検討する.

 くる病・低カルシウム血症が顕在化する一因として,カルシウム摂取不足も関与している可能性があるため,尿中Ca/Crが0.1を下回る場合はカルシウム補充の必要性についても検討する.

 治療開始後は,症状や生化学的パラメーターの改善を確認しながら投与量の調整を行う.通常,半年以上をか

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