診療支援
治療

カリウム・クロール欠乏症
potassium deficiency,chloride deficiency
皆川真規
(千葉県こども病院内分泌科・医療局長)

Ⅰ.カリウム(K)欠乏症

●病態

・血清K濃度3.0mEq/L以下では心電図異常,不整脈がみられ,2.0mEq/L以下では心停止の危険性がある.その他の症状は脱力感,四肢のしびれ感,弛緩性麻痺,便秘,麻痺性イレウス,多尿など.

・低K血症の機序は,①細胞外から細胞内へのKの移動,②腎,消化管,体表面からの過剰喪失,③摂取低下である.K欠乏症は②③が該当するが,③は非常にまれである.尿中K排泄量が24時間蓄尿で25mEq以下,多尿のない状態で尿中K濃度が15mEq/L以下であれば,腎からの過剰喪失の可能性は低い.

●治療方針

 経口製剤による治療が安全.神経筋症状や心症状を伴う場合や重度の低K血症(2.5mEq/L以下)は緊急性があり,慎重に持続静注を行う.

A.経口製剤治療が可能なとき

Px処方例 下記のいずれかを用いる.少量から開始し,血清Kの推移をみながら増減する.

➊塩化カリウム末(1gあたりK 13.4mEq含有) 1回40~75mg/kg(製剤量として) 1日3~4回(成人量1日2~10gを数回に分割)

➋グルコンサンK細粒(4mEq/g) 1回125~250mg/kg(製剤量として) 1日3~4回(成人量1回10mEq相当量を1日3~4回)

B.重度あるいは経口治療ができないとき(静注による治療)

 輸液中K濃度を20~40mEq/Lとし,0.3mEq/kg/時以下で持続静注する.輸液中K濃度40mEq/L以上が必要な場合,中心静脈(できれば心臓から遠い大腿静脈)からの投与とする.

 Kが細胞内に移行し,一時的にKが低下することがあるため,糖分や重炭酸を含まない輸液組成がよい.

Px処方例

ソリタ-T3号注 500mLにKCL注10mEqキット1本(10mL)添加 体重10kgの児に輸液中K濃度40mEq/Lとして維持輸液速度40mL/時で持続静注(0.16mEq/kg/時での投与

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