診療支援
治療

微量元素欠乏症
trace element deficiency
児玉浩子
(帝京平成大学・特任教授)

Ⅰ.亜鉛欠乏症(zinc deficiency)

●病態

・亜鉛欠乏症はまれではない.低出生体重児,高齢者,妊婦,スポーツ選手,慢性肝疾患,慢性炎症性腸疾患,慢性腎疾患,糖尿病,キレート作用のある薬剤使用で発症する.

・症状は,皮膚炎,脱毛,体重増加不良,低身長,味覚異常,男性性腺機能不全,易感染性などである.

●治療方針

 亜鉛欠乏症の症状があり,ほかの疾患が否定でき,血清亜鉛値が80μg/dL未満が適応になる.慢性肝疾患,慢性炎症性腸疾患,腎不全,糖尿病で,血清亜鉛値が低値である場合も適応である.

 血清亜鉛値を定期的(数か月に1回)に調べて,基準範囲を維持するように投与量を増減する.副作用として銅欠乏を生じることがある.血清銅も定期的に調べる.

Px処方例

ノベルジン錠(25・50mg) 体重30kg未満:1回25mg 1日1回 食後,体重30kg~成人:1回25~50mg 1日2回 食後 血清亜鉛値などにより適宜増減

■専門医へのコンサルト

・亜鉛製剤を2か月間以上投与しても,血清亜鉛値および症状が改善しない場合は専門医に紹介する.

Ⅱ.銅欠乏症(copper deficiency)

●病態

・要因としてMenkes(メンケス)病,occipital horn(オクシピタル・ホーン)症候群,亜鉛の経口投与があげられる.

・症状・所見は,赤毛,骨粗鬆症,血管異常,血清銅およびセルロプラスミン低値,貧血,白血球減少などである.

●治療方針

 Menkes病,occipital horn症候群は,他項(「Menkes病」)参照.亜鉛投与による場合は亜鉛製剤の中止・減量をする.

 銅のみの製剤はない.銅補充には高カロリー輸液用微量元素製剤や微量ミネラル補給飲水(テゾン,銅含有量0.3mg/125mL)を投与する.

Ⅲ.セレン欠乏症(selenium deficiency)

●病態

・セレンを含有していない経腸

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