●病態
・低リン血症性くる病とは慢性的な低リン血症を主因とする骨石灰化障害であり,以下のような疾患が含まれる.
a)腸管におけるリン吸収不足
・リン摂取不足
・吸収障害
b)腎臓からのリン喪失
・尿細管機能障害〔Fanconi(ファンコーニ)症候群など〕
・高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血症性くる病
・FGF23関連低リン血症性くる病(X連鎖性低リン血症性くる病など)
・高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血症性くる病は,Ⅱc型ナトリウム/リン酸共輸送担体の機能喪失変異による腎臓でのリン酸再吸収障害である.
・一方,FGF23関連低リン血症性くる病はFGF23の作用過剰に基づき,リン酸排泄増加による低リン血症に加えてビタミンDの活性化障害を認める.代表的なFGF23関連低リン血症性くる病であるX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)は,PHEX遺伝子の機能喪失変異に基づく.よりまれな遺伝性低リン血症性くる病の責任遺伝子として,DMP1,ENPP1,FAM20Cが知られている.
●治療方針
A.リンの摂取不足や吸収障害,尿細管機能障害
経口リン酸製剤(ホスリボン)の投与を行うが,ビタミンD欠乏が合併している場合にはその治療も必要になる.
B.高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血症性くる病
経口リン酸製剤のみの投与で改善する.
C.XLHなどFGF23関連低リン血症性くる病
リン排泄増加にビタミンDの活性化障害を伴うため,経口リン酸製剤と活性型ビタミンDを併用する.活性型ビタミンD投与が長期にわたるため,尿中カルシウム排泄が増加し,腎機能に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要である.成人における治療は確立していない.2019年9月,抗FGF23完全ヒト抗体(ブロスマブ)の国内製造販売が承認された.
Px処方例 下記を併用する.
ホスリボン薬配合顆粒 1回5~10mg/kg (リンとして) 1日4
関連リンク
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