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治療

伝染性紅斑,その他のヒトパルボウイルスB19感染症
erythema infectiosum and the other diseases caused by human parvovirus B19
西村直子
(江南厚生病院・こども医療センター長)

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[感]伝染性紅斑:5類

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●病態

・ヒトパルボウイルスB19は,パルボウイルス科パルボウイルス亜科エリスロパルボウイルス属に属する1本鎖DNAウイルスである.

・飛沫感染または接触感染により感染し,7~10日後にウイルス血症を起こす.17~18日後に紅斑が出現するが,感染力が最も強いのはウイルス血症の時期である.発疹出現後の感染性はほとんどないため,隔離は不要である.幼児~学童期に好発し,一度感染すると終生免疫を得られる.

・伝染性紅斑は,頬がりんごのように赤くなることから「りんご病」ともよばれている.両頬の平手打ち様紅斑を特徴とし,それと同時かやや遅れて四肢を中心に斑状丘疹が出現,部分的な癒合と中心部の退色によりレース状あるいは網目状の紅斑となる.年長児や成人ではかゆみを伴いやすく,関節痛を訴えることもある.発疹は1~2週間で消退することが多い.日光,運動,ストレスなどにより3週間程度は再燃と消退を繰り返す場合もある.

・溶血性貧血患者にヒトパルボウイルスB19が感染すると,一過性の無形成発作(aplastic crisis)を起こすことがあり,急激な貧血をきたす.免疫不全患者においては,ウイルスの持続感染が生じ,赤血球系の慢性骨髄不全を呈することがある.妊婦(特に28週未満)が感染すると約30%に胎内感染が成立し,胎児死亡や胎児水腫をきたす場合がある.

●治療方針

 ヒトパルボウイルスB19に対する抗ウイルス薬はない.

A.伝染性紅斑

 自然治癒する予後良好な疾患であるため,基本的に経過観察のみでよい.対症療法として,かゆみに対して抗ヒスタミン薬,関節痛に対して非ステロイド性消炎鎮痛薬などが投与されることがある.全身状態がよければ登

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