診療支援
治療

新興感染症
emerging infectious diseases
砂川富正
(国立感染症研究所感染症疫学センター第二室・室長)

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[感]エボラ出血熱:1類,鳥インフルエンザ(H7N9),中東呼吸器症候群:2類 [学]エボラ出血熱,鳥インフルエンザ(H7N9),中東呼吸器症候群:1種(治癒するまで)

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 新興感染症は,それまで明らかにされていなかった病原体に起因してヒトでの発生が増加している,または近い将来増加するおそれがある感染症,と定義されている.1992年は,米国疾病管理予防センター(CDC:Center for Disease Control and Prevention)が新興感染症の概念を提唱したことにより,感染症が再び世界的な健康課題の1つとして認識された年であった.国内においても,2003年に世界的な問題となった重症急性呼吸器症候群(SARS:severe acute respiratory syndrome)が「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号.以下「感染症法」という)に含まれるにあたり,緊急時における感染症対策の強化,特に動物由来感染症に対する対策の強化が組み込まれた.2008年には鳥インフルエンザ(H5N1)が2類感染症に追加され,新たに「新型インフルエンザ等感染症」という類型が創設された.

 2019年初旬において,世界的に問題となっている代表的な新興感染症として,エボラ出血熱,中東呼吸器症候群(MERS),および鳥インフルエンザ(H7N9)があげられる.新興感染症対策においては,単に重症感染症を治療する側面のみならず,感染者の早期探知や感染拡大予防のための接触者調査など,実地医家と公衆衛生担当者との強力な連携が共通して重要である.またSARS出現以来強調されているが,新興感染症が

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