治療のポイント
・感冒様にみえるほかの重篤な疾患の除外診断が重要.
・感冒の自然経過を熟知して,不必要な投薬は行わない.
・保護者への啓蒙を含めた,疾患の説明を丁寧に行い,保護者の不安感を取り除くことが最も重要.
・急性中耳炎などの合併症の診断・治療を確実に行う.
●病態
・感冒は「かぜ症候群」とほぼ同様に扱われることが多いが,「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017」の定義では「鼻汁と鼻閉が主症状のウイルス性疾患で,筋肉痛などの全身症状がなく熱はないか,あっても軽度なものを指す(おおむね38.5℃未満).鼻炎といわれるが,より正確にはrhinosinusitis(鼻副鼻腔炎)である」とされている.
・原因ウイルスとしては,ライノウイルス,パラインフルエンザウイルス,RSウイルスなどが多い.近年,ヒトメタニューモウイルスやボカウイルスなども重要な原因ウイルスであることが認知されている.
・臨床症状としては,1~3日間の潜伏期間の後に咽頭痛から始まり,鼻汁や鼻閉などの鼻症状が主体となる.咳嗽も約30%に認められる.鼻汁の色調や粘度変化が経過中に認められるが,細菌の2次感染によるものではないとされる.これらの症状のほとんどはウイルスによる細胞損傷ではなく,感染により自然免疫や獲得免疫が誘導活性化され,その過程で産生される炎症性メディエーターによる生体防御反応のために生じていることを理解する必要がある.
●治療方針
感冒はウイルス感染症であり,自然治癒するため経過観察が原則である.多くのメタアナリシスで,抗菌薬は膿性鼻汁や感冒の経過,下気道感染予防に関して効果がないことが示されている.また抗ヒスタミン薬や鎮咳薬などの対症療法薬も有用性に関するエビデンスはない.感冒に対して,抗菌薬や抗ヒスタミン薬の投与は不要である.
注意する点は,感冒様にみえるほかの重篤な疾患を鑑別することである.発熱のみで鼻汁
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