診療支援
治療

急性呼吸窮迫症候群
acute respiratory distress syndrome(ARDS)
植田 穣
(埼玉医科大学病院小児科・講師)

●病態

・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは先行する何らかの基礎疾患を背景に急性発症し,進行性の低酸素血症をきたす疾患で表2のように定義される(Berlin定義).

・肺胞腔内水分貯留による肺胞の虚脱(シャント血流増加,肺胞低換気),間質の線維化や肺胞膜の肥厚(拡散障害)が生じ,その結果,肺が硬化しコンプライアンス低下・気道抵抗上昇をきたす.

・さらに肺の荷重部で換気低下と血流増加(換気血流比の不均等分布)が生じる.

●治療方針

 ARDSの治療には薬物療法,人工呼吸管理,体外式膜型人工肺(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)があり,以下それぞれについて解説する.

A.薬物療法

 現時点で生存率の改善に有効性が確立した薬剤は少なく,メチルプレドニゾロン(1~2mg/kg/日)の2週間以内投与で人工換気期間の減少などが示され,急性期・後期を問わず推奨される.その他,高用量ステロイド療法,サーファクタント,好中球エラスターゼ阻害薬,抗凝固療法,プロテアーゼ阻害薬,一酸化窒素(NO:nitric oxide)吸入療法,β2刺激薬などは有効性が確立していない.

Px処方例

ソル・メドロール注 1回0.5mg/kg 1日2~3回

B.人工呼吸管理

1.肺保護戦略

 ARDSは重症の呼吸障害のため人工呼吸管理は必須である.肺へのダメージは過大な1回換気量による肺胞の過伸展が引き起こすvolutraumaと,虚脱した肺胞を強制的に換気することにより生じるatelectraumaがあり,その機序により侵襲を受けた肺がさまざまなサイトカインやケミカルメディエーターを産生し,肺へのさらなる障害だけでなく遠隔臓器にも障害を引き起こす(biotrauma)ことがわかっている.これらの発生を回避するために,肺保護換気戦略として①高い呼気終末陽圧(PEEP:positive

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