診療支援
治療

気管支拡張症
bronchiectasis
金子忠弘
(公立置賜総合病院救急科・医長)

●病態

・気管支拡張症は壁構造が破壊され,気管支樹の異常な拡張や弯曲などの構造的異常により特徴づけられる症候群である.

・以前は百日咳や麻疹などの感染症に続発するものが多かったが,公衆衛生や住環境の改善,ワクチンや抗菌薬の進歩により減少した.

・近年では,気管支線毛機能異常や免疫不全症などで気道感染を繰り返し発症するものがみられる.

・気道異物や慢性的な誤嚥も原因となり,欧米では嚢胞性線維症(cystic fibrosis)によるものが多い.

・症状は遷延する湿性咳嗽で,感染を契機に発熱,分泌物の増加を示す.時に血痰・喀血を認めるが小児例ではまれである.

・進行例では呼吸困難,cyanosis,肺性心などを示す.

・胸部聴診ではcrackles,rhonchiを聴取する.

・胸部X線写真で,線状無気肺や拡張した気管支によるtram-tracking,ring shadowsが認められる.胸部CTで気管支の拡張を確認し診断する.

・画像的,病理学的な形態的特徴から円柱状,紡錘状,嚢状に分類され,円柱状では治療に反応し改善する症例がみられる.

●治療方針

 気道異物や誤嚥などの介入可能な原因があれば,それに対する治療を行う.気道クリアランスを改善し,病勢の進行を防ぎ遅らせることが重要で,感染予防,炎症の制御を行う.

A.呼吸理学療法

 分泌物の産生亢進と排泄遅延による気道内貯留が問題であり,気道クリーニングを効率的に行うことが重要である.積極的に排痰を促すため,体位ドレナージやスクイージング,あるいはフラッターやアカペラなどの補助器具が使用される.

 呼吸理学療法士によるリハビリテーションだけではなく,長期的に毎日継続できるように,家族や本人にも指導・援助することが重要である.

B.抗菌薬

1.急性増悪時(下気道感染)

 喀痰培養の結果を考慮し,適切な抗菌薬治療を行う.培養がない場合にはStreptococcu

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