診療支援
治療

肺葉性肺気腫
lobar emphysema(LE)
岡田邦之
(おかだこどもの森クリニック・院長(埼玉))

●病態

・肺葉性肺気腫(LE:lobar emphysema)は,先天性あるいは後天的な種々の原因により気管支腔の虚脱が生じ,チェックバルブ機序により所属する罹患肺葉が過膨張して正常肺を圧迫して呼吸困難を生じる比較的まれな疾患である.

・日本気胸・嚢胞性肺疾患学会の肺嚢分類(2006年版)では気腫性肺嚢胞の一部として分類されているが,小児の肺葉性肺気腫は肺胞構造が保たれたまま過膨張しているに過ぎず,組織破壊を伴うものではない.病理学的に成人の肺気腫とは異なり単一の疾患と考えるより病態と考えるべきであるとの意見もあり,用語としての混乱がみられる.

・発生頻度は2~3万出生に1人で,欧米では男児が女児の約2倍発症するが,わが国では男女差はさほどないとの報告がある.

・発症時期は,出生直後から呼吸困難がみられる症例を含めほとんどが6か月未満に発症しているが,まれに幼児期以降に発症する症例もあり注意が必要である.

・症状は,チアノーゼや呼吸困難が主体で,気腫状変化が進行した場合は健側肺や周辺臓器を圧排することによる呼吸・循環不全に至ることもある.

・年長児になると呼吸器感染症を主訴とする傾向がみられるとの報告もある.

・罹患肺葉部位は左上葉や右中葉に多い.罹患部が右中葉の場合は心血管奇形の合併が多く,左上葉の場合は気管支病変に起因することが多い.

・チェックバルブ状に狭窄する気管支が約8割の原因であるとの報告もあるが,病理組織検査を含めたさまざまな検査でも約半数が原因不明との報告もある.

・近年,胎児診断技術の向上に伴って出生前診断されるケースが多くなってきた.しかし出生前診断のみでは嚢胞性肺疾患が確認されるのみで,肺葉性肺気腫の確定診断まで至らないことが多い.

・CTにて病変部と中枢気道の情報を把握し,器質的疾患の疑いが強い場合は気管支鏡検査や気管支造影・肺静脈造影などを行い,区域気管支や気管支分岐

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