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治療

先天性横隔膜ヘルニア,食道裂孔ヘルニア
congenital diaphragmatic hernia and esophageal hiatal hernia
星野 健
(慶應義塾大学外科学(小児)・特任准教授)

 先天性横隔膜ヘルニアは新生児期より発症する胸腹裂孔ヘルニア,発症年齢が比較的高い胸骨後ヘルニア,そして食道裂孔ヘルニアの傍食道型の総称である.そのなかでも胸腹裂孔ヘルニアは出生より24時間以内に重篤な症状をもって発症する例が多く,後2者とは病態も治療方針もまったく異なる.

Ⅰ.胸腹裂孔ヘルニア(Bochdalekヘルニア)

●病態

・胸腹裂孔管の胎生期の閉鎖不全によって裂隙が生じて発症する.胎児期に腹部臓器が嵌入し,肺圧迫による肺低形成が生じる.これにより新生児遷延性肺高血圧症(PPHN:persistent pulmonary hypertension of the newborn)を引き起こす.

・高度な肺高血圧のため,動脈管や卵円孔での右-左短絡を呈し,低酸素血症に陥り,これが死亡原因となる.診断は心臓超音波検査による右-左短絡の有無の確認で行われるが,上下肢の経皮酸素飽和度の較差により疑われ,右上肢〔動脈管前(preductal)〕と下肢〔動脈管後(postductal)〕との動脈血酸素分圧較差が20Torr以上あれば,ほぼ診断できる.

●治療方針

 重症例では,治療可能な施設に搬送する必要がある.しかし搬送までに状態の悪化をみることも多く,出生前診断による母体搬送のよい適応である.

A.手術

 脱出した腹部臓器を還納し,横隔膜欠損部の縫合閉鎖を行う.欠損が大きな場合は人工膜を必要とする.手術ポイントは嵌入臓器による肺への圧迫や心大血管の捻れを解消する点にあるが,低形成肺では肺機能回復という点では即効的効果は期待できない.

B.PPHNに対する治療

1.人工換気

 barotraumaによる気胸の発生を抑えるため高頻度振動換気法(HFO:high-frequency oscillation)を用いる.肺血管の拡張を目的として,①吸入酸素濃度を上昇,②過換気により呼吸性アルカローシスの誘

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