診療支援
治療

胃・十二指腸潰瘍
gastroduodenal ulcer
清水俊明
(順天堂大学小児科学・教授)

治療のポイント

・大量出血や穿孔をきたすことがあり,急性腹症の原因として常に念頭におく.

・慢性腹痛や下血,鉄欠乏性貧血の鑑別疾患としても重要である.

・診断には上部消化管内視鏡検査が必要であり,治療方針を決めるためにも積極的に行う.

Helicobacter pyloriH.pylori)感染が半数以上に認められ,除菌治療が必要になってくる.

●病態

・十二指腸潰瘍の主たる原因としてはH.pylori感染症があげられ,わが国の小児における十二指腸潰瘍の約80%で感染を伴うとされる.

・十二指腸潰瘍は前庭部胃炎を伴うガストリン産生の増加や,十二指腸の胃上皮化生による酸分泌抑制機構の障害が胃酸分泌亢進を引き起こすために生じるとされる.

・一方で胃潰瘍に占めるH.pylori罹患者は約40%であり,薬剤やストレス,感染症などに起因する症例が多いとされる.

H.pylori感染による胃潰瘍は,胃粘膜の炎症と萎縮に伴う粘膜防御機構の低下が原因と考えられている.

●治療方針

A.潰瘍の急性期治療

 臨床症状とバイタルサイン,各種検査から出血,穿孔,狭窄といった合併症がないかどうかを診断する.合併症を有する場合は入院管理のうえで緊急手術を検討し,摂食困難な症例も入院管理とする.出血性潰瘍に対しては急性期(止血処置後48時間以内)の絶食が妥当と考えられ,再度内視鏡検査を行い,再出血の有無を確認することも必要となる.

B.原因の除去および原疾患の治療

 NSAIDs内服中の場合,原則内服を中止し抗潰瘍薬を投与することとなる.基礎疾患の治療のため投与の中止が困難な場合は,プロスタグランジン製剤やプロトンポンプ阻害薬(PPI),H2受容体拮抗薬(H2RA)によって潰瘍治療を試みる.またH.pylori感染に伴う胃・十二指腸潰瘍は除菌療法の適応であり,保険適用もある.

 除菌療法による再発予防効果も示されており,第1選

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