診療支援
治療

腸回転異常症
malrotation
浜田弘巳
(北海道立子ども総合医療・療育センター小児外科・部長)

●病態

・およそ90%は乳児期までに発症し,その多くは新生児期に発症する.病因は発生途中での腸管の回転と固定が完成しないことに由来する疾患の総称である.このため,その程度により多彩な症状を呈する.

・症状として中腸軸捻転によるものと,Ladd(ラッド)靭帯の圧迫による十二指腸閉塞に由来するものがある.新生児期に胆汁性嘔吐にて発症し,下血を認めた場合は中腸軸捻転を強く疑う.乳児期以降では捻転は少なく,繰り返す胆汁性嘔吐や腹痛を主訴に受診した場合は,本症を鑑別診断にあげる必要がある.

●治療方針

A.診断

 上記症状にて本症を疑診し,腹部X線写真,超音波検査(US)を行う.上部・下部消化管造影にて確診を得る.USにて上腸間膜静脈(SMV)が上腸間膜動脈(SMA)の左側にある場合が疑わしい.またSMA本幹周囲にSMA,SMVが渦巻状にみえる所見(whirlpool sign)は,捻転の所見である.

 上部消化管造影ではTreitz(トライツ)靭帯は正中より左で十二指腸球部の高さが第二腰椎より頭側にあることより,十二指腸第3部が尾側に向かうときは本症を疑う.注腸造影は軸捻転の診断には必要はない.また盲腸の高位は本症を疑うが,右下腹部にあっても本症は否定できないことに留意する必要がある.

B.治療

 症状を呈し本症と診断された場合は手術適応である.特に捻転が疑われる場合は,上部消化管の減圧を行うとともに輸液,輸血などで循環動態を維持しつつ緊急手術を行う.手術術式については成書を参照されたい.術中には合併奇形として内因性十二指腸閉鎖・狭窄の有無に留意しておく.

 無症状で診断された本症の手術の是非については確定していない.手術せずに経過観察を行うに際しては,病歴,画像診断での十二指腸-空腸と盲腸-結腸の位置関係などを評価して判断する.ほかの術中に偶然発見された際には,腸間膜根部の開大が十分であればLad

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