診療支援
治療

消化管穿孔
gastrointestinal perforation
黒岩 実
(東邦大学医療センター大森病院小児外科・教授)

●病態

・食道・胃・十二指腸・小腸(空腸・回腸),大腸(結腸・直腸)などの消化管壁が破綻し(壊死や破裂など),内容が壁外に漏れ出た状態をいう.その原因は多様で主に消化管病変,医原性,外傷(外力)などであるが,原因不明(特発性)のこともある.

・局所の炎症進展に伴う血管透過性亢進・循環血液量低下により,低血圧や呼吸状態の悪化をきたす.しばしば全身性炎症反応症候群(SIRS:systemic inflammatory response syndrome)や播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発し,ショック状態から急性腎不全に陥る.原因となりうる代表的疾患は表1のごとくで,穿孔はどの年齢層でも起こるが,新生児における発生が多く,その大部分は小腸である.

・穿孔部位により症状はさまざまである.胸部食道に穿孔を生ずれば,気腫(頸部や縦隔),縦隔炎,発熱,胸水貯留および呼吸器症状やチアノーゼなど,腹部食道から直腸であれば腹腔内遊離ガスと腹水貯留により高度の腹満と呼吸障害を生じ,頻脈・血圧低下やショックをきたす.

・新生児では,しばしば腹壁(特に臍部)や陰部(陰唇,陰嚢)の変色・発赤や浮腫による皮膚光沢をみることがある.

●治療方針

 上記症状で本症を疑った場合,以下に示す対応が迅速に行われなければならない.

A.全身状態の把握と迅速な診断

 児の活動性,呼吸状態(陥没,呻吟や無呼吸)および脈拍,血圧,尿量などの循環指標より,輸液の必要量や呼吸補助の必要性を含めた重症度の判定をする.

 消化管穿孔の診断は,胸部では縦隔気腫や造影検査でなされるが,腹部では単純X線撮影による遊離ガス像の存在による.正面像でわかりにくければ,側面やクロステーブル撮影が有用なことがある.適応があれば少量の遊離ガスの検出目的にCTスキャンが行われる.壊死性腸炎(NEC:necrotizing enterocolitis)を疑う場

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