診療支援
治療

乳児難治性下痢症
intractable diarrhea of infancy
永田 智
(東京女子医科大学小児科学・主任教授)

治療のポイント

・下痢の種類が浸透圧性か分泌性かで治療のアプローチは大きく異なるため,まず両者の鑑別が重要である.

・分泌性下痢は原因療法が主体となるため,専門施設への転送が必要である.

・生後6か月以内は先天性下痢症が疑われるため,早急で正確な診断が求められる.

・ほとんどは浸透圧性下痢で,適切な経腸栄養と,時にプロバイオティクスの投与が必要である.

・浸透圧性下痢の場合,経静脈栄養に依存することはなるべく避けるべきである.

●病態

・乳児期(特に生後3か月以下)に成長障害をもたらす原因不明の慢性の下痢をきたす症候群の総称で,多くは経静脈栄養管理を要する.

・絶食で下痢が止まらず便中ナトリウム濃度が70mEq/L以上であれば,分泌性下痢と診断される.

・先天性下痢症として下記のものがあげられる:先天性クロール下痢症,先天性ナトリウム下痢症,先天性微絨毛萎縮症(微絨毛封入体病),先天性免疫不全症(IPEX症候群など),小腸上皮異形成症など.

・浸透圧性下痢は小腸で消化吸収できない炭水化物が結腸に流入することにより,管腔内の浸透圧が上がり下痢をきたすもので,絶食で下痢は軽減する.

・ほとんどの浸透圧性慢性下痢には,経静脈栄養による小腸粘膜萎縮,消化液分泌不全,腸内細菌叢のインバランスによる腸内環境悪化が関与している.

●治療方針

 分泌性下痢症,先天性下痢症は原因療法が主体なので,小児消化器専門医のいる施設に転院が基本である.その他のほとんどの浸透圧性下痢は栄養療法が基本で,時に薬物療法の併用が有効なことがある.本項では浸透圧性下痢の治療について述べる.

A.栄養療法

 急性期に脱水症や電解質異常,代謝性アシドーシスを呈していたら,すみやかに末梢輸液により補正を行う.

1.経静脈栄養

 小腸粘膜萎縮,消化液分泌不全を生じている場合は,経腸栄養だけでは栄養不良に陥るため,1~2週間程度を限度として経静脈栄養で栄

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?