診療支援
治療

低酸素発作
hypoxic spell
中島弘道
(千葉県こども病院循環器内科・副病院長)

●病態

・肺血流の急激な低下により,重篤な低酸素血症に陥る病態でありanoxic spell,hypercyanotic spellともいわれる.Fallot(ファロー)四徴症に代表される右室流出路狭窄を伴うチアノーゼ性心疾患の乳幼児にみられるが,最近では早期の外科的修復により観察する機会は減少している.

・6か月~2歳の乳幼児に多いが,早ければ3か月頃から生じる.早朝や入浴後に多く,誘因として啼泣,排便,麻酔などがあり,貧血があるとより発症しやすい.

・症状は不機嫌,チアノーゼ増強,苦悶様啼泣,多呼吸,不穏,呼吸困難などであり,軽症の場合には数分で回復するが,重症であると息止め,けいれん,意識消失などを起こし最悪死に至ることもある.

・右室流出路(漏斗部)の筋れん縮により肺血流が減少し低酸素が悪化すると考えられているが,漏斗部狭窄のない例でも生じることがあり,複合的な要因によるとされている.

・発症要因の1つは急な疼痛や不安による交感神経緊張(内因性カテコールアミン放出)によって生じた酸素需要の増加である.また急な体血管抵抗の低下(入浴,発熱疾患,麻酔などによる)により右左短絡が増加すること,頻脈や脱水による右室の前負荷減少により肺血流が減少することも要因となる.これらが関与し代謝性アシドーシスをもたらし悪循環を形成し,低酸素が増悪していく.

●治療方針

 治療には発作時の治療と発作予防がある.

A.発作時の治療

 病態を理解し,肺体血流のバランスの不均衡を是正し,悪循環を断ち切ることが発作時の救命につながる.すなわち①酸素消費量の減少(痛みと不安の減少),②体血管抵抗の増加(胸膝位,体血管収縮剤),③肺血流の増加(輸液,頻脈是正による前負荷増加,右室流出路筋収縮の抑制)を目標とした治療をすみやかに行う.

 まず乳児はすみやかに抱きかかえ安心させ,同時に下肢を屈曲させ胸に近づける胸膝位を保つ

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