診療支援
治療

心疾患を有する学童・生徒の管理と指導
management and guidance for school children students with heart disease
増谷 聡
(埼玉医科大学総合医療センター小児科・教授)


A.病態

 学童・生徒の心疾患は,先天性心疾患,不整脈,心筋症,川崎病後,肺高血圧症などに大別される.そのうち治療・制限が不要なものが大半を占める.

 心疾患の一部で,安静時および運動時における心不全・不整脈・チアノーゼ・肺高血圧の程度,および治療内容により生活や運動の制限が必要である.同じ病名でも重症度や運動による影響が個々に異なるため,個別の管理・指導が重要である.

 その目的は心疾患の予後改善と,突然死を含む心事故の回避である.規則的な生活とバランスのよい食事を心がけ,必要な内服は確実に行う.以下は運動を中心に述べる.

B.運動管理方針

 複雑心奇形,重篤な不整脈および不整脈基質(不整脈を起こしやすい体質),心筋症,肺高血圧症は,専門医のもとでの管理が望ましい.以下,一般的な運動管理の概要を示す.背景となる疾患・病態が多彩なため,ガイドラインなども参照されたい.

 適度な運動は心不全の予後を改善し,さまざまな利点があり安易・不要な運動制限は避ける.一方で運動は酸素需要を増大させる.運動に伴って十分に血流を増加させられなければ,組織での酸素の需要供給ミスマッチから心不全が顕在化する.

 運動に伴う交感神経活動の増加から一部の不整脈が悪化する.これらが予測される病態では運動負荷試験を行い,運動に伴う変化を評価し,運動制限の必要性の有無と程度を決定する.特に運動時の失神は心事故の可能性が見込まれるため,心原性失神を念頭に積極的に精査し,その結果に基づいて管理する.QT延長症候群での水泳の可否判定には,顔面冷水試験が参考になる.

 「学校生活管理指導表」を記載し学校と共有する.指導表はウェブ上からダウンロード可能で,管理区分ごとの許容運動内容が記載されている.Aは在宅医療または入院治療,Bは登校可能だが運動は不可で,いずれも重症例の区分である.Cは軽い運動,Dは中等度の運動,Eは強い運動まで

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