診療支援
治療

無脾症候群
asplenia syndrome
佐川浩一
(福岡市立こども病院循環器センター・センター長)

●病態

・胸腹部臓器が左右軸に基づく位置や形態の異常を示す心房内臓錯位症候群に含まれ,脾臓の欠損,形態異常に特有の複合奇形を伴うことにより名づけられた.

・右側相同(right isomerism,両側三分葉肺など左右ともに右側特有の形態を示す状態)とほぼ同義である.

A.臨床症状

1.心奇形

・複雑心奇形が多く,心房中隔がほとんど形成されないため単心房が多く,共通房室弁の右室型単心室が多い.

・総肺静脈還流異常,肺動脈狭窄ないし閉鎖の合併も多く,生直後より高度の肺血流減少によるチアノーゼをきたすことが多い.

・肺静脈狭窄合併例では,肺うっ血に伴う多呼吸などの呼吸障害を呈することもある.

2.消化管奇形

・対称肝を呈する.食道裂孔ヘルニア,腸回転異常,十二指腸狭窄,閉鎖,輪状膵もよく認められ,腸回転異常では腸閉塞を合併することもある.

3.易感染性

・無脾症候群では,肺炎球菌やインフルエンザ桿菌など莢膜抗原を有する細菌感染症のリスクがある.これらによる化膿性髄膜炎や敗血症を高頻度に発症する.

●治療方針

A.合併心奇形に対して

 無脾症候群は一心室修復〔Fontan(フォンタン)型手術〕になることが多い.

1.内科的治療

 肺循環,体循環を動脈管に依存する心疾患(肺動脈閉鎖・重度狭窄,大動脈縮窄症など)では,動脈管を開存させる目的でプロスタグランジン製剤の持続点滴を行う.肺血流が増加する疾患では,利尿薬,血管作動薬,低酸素ガス吸入療法などを行う.

2.外科的治療

 肺血流減少型では体肺動脈短絡術,肺血流増加型では肺動脈絞扼術が新生児期,乳児期に初回手術として行われる.この際肺静脈還流異常に伴う肺静脈狭窄解除を行うこともある.生後6か月頃に両方向性Glenn(グレン)手術,生後2歳頃にFontan型手術を行うことが多い.

B.易感染性に対して

 感染予防として,ワクチン接種と抗菌薬の予防内服が推奨されている.現在,

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