診療支援
治療

播種性血管内凝固症候群
disseminated intravascular coagulation(DIC)
石原 卓
(奈良県立医科大学小児科学)

治療のポイント

・必ず原因となる基礎疾患を伴うので,その疾患に対する治療が最優先である.

・DIC診断基準は複数あり,基礎疾患により診断感度が変わるため注意が必要である.

・持続する凝固能の活性化状態に対して,線溶能の活性化(出血症状がメイン)ないしは抑制(臓器障害がメイン)が基礎疾患によって変わるのがポイントである.

・したがって線溶能の状態に応じて,抗凝固療法,抗線溶療法,補充療法を適切に選択する必要がある.

●病態

・基礎疾患により持続性の凝固活性化状態をきたし,微小血管障害性溶血性貧血が生ずるため,消費性の凝固/線溶関連因子の低下,血小板低下を生ずる.

・線溶能の状態によりDICは下記の3つに分類される.代表的な基礎疾患を示す.

 a)線溶抑制型DIC(臓器障害):敗血症

 b)線溶亢進型DIC(出血症状):急性前骨髄球性白血病(APL:acute promyelocytic leukemia),大動脈瘤

 c)線溶均衡型DIC(凝固/線溶能が均衡,無症状の場合もあり):固形腫瘍

●治療方針

 DICの臓器障害は腎,肝,中枢神経,肺などに生じ,対応が遅れれば多臓器不全に陥る.出血症状も口腔内・消化管,さらには頭蓋内や肺などで起こると致死的であり,早期診断・早期治療が重要である.

A.診断基準

 DIC診断基準は現在複数存在しており,臨床現場では混乱が生じている.最も頻用されてきた「旧厚生省DIC診断基準」を表1に示す.

B.線溶抑制型DICの治療

1.抗凝固療法

Px処方例 ➊➋のどちらかを用いることが多かったが,近年は抗炎症作用も期待できる➌にとって代わることが多い.ただし出血症状がある場合は➌も使いづらい.またアンチトロンビン(AT)活性<70%で➍を用いる.

➊ヘパリンナトリウム注 1回5~15単位/kg/時 持続静注

➋フラグミン注 1日75単位/kg 持続静注

➌リコモジュリン注 1回3

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