●病態
・小児の腎腫瘍の約80%を占め,年間発生数は全国で70~100例程度と推定されている.3歳未満の乳幼児に発生することが多く,泌尿器系の奇形を合併することがある.またWAGR症候群,Beckwith-Wiedemann(ベックウィズ・ヴィーデマン)症候群,Denys-Drash(デニス・ドラッシュ)症候群などの症候群に頻発する.
・初発症状としては腹部腫瘤・腹部膨満が最も多いが,血尿で発見されることもある(約20%).レニン高値による高血圧が約20%の症例でみられる.
・原因としてWT1遺伝子の変異が有名であるが全例に関与しているわけではなく,ほかにもIGF(インスリン様成長因子)2,βカテニン遺伝子の異常などが報告されている.
●治療方針
手術・化学療法・放射線治療を組み合わせた集学的治療の進歩により,治療成績は飛躍的に向上し,最近では転移例も含めた全症例の生存率が90%近くにまで達している.
A.COG方式・SIOP方式
治療方針は,米国小児がんグループ(COG)と欧州を中心とした国際小児がん学会(SIOP)の2つの方式に大きく分かれる.
a)COG式:腫瘍を腎臓とともに全摘出→病期分類と組織診断に応じた化学療法・放射線治療を行う
b)SIOP式:まず化学療法を開始→腫瘍を縮小させてから全摘→術後の化学療法・放射線治療を行う
わが国では米国式の治療が行われることが多く,日本ウィルムス腫瘍研究グループ(JWiTS)でも米国式の治療方針で治療研究を行ってきた.しかし,今後はSIOPの新しい治療プロトコール(UMBRELLA)を導入する予定である.
病期分類はCOG方式が広く用いられている.病期Ⅰ,Ⅱは限局例,病期Ⅲは局所進展例,病期Ⅳは遠隔転移例である.両側例を病期Ⅴとして扱い,独自の治療プロトコールで治療される.
化学療法薬として,病期Ⅰ,ⅡではアクチノマイシンDとビンクリス
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