●病態
・腎実質性高血圧は,小児の二次性高血圧の原因として最多である.慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)症例の多くが高血圧を呈し,慢性・急性糸球体腎炎や逆流性腎症などが原因となる.
・腎血管性高血圧は,片側あるいは両側の腎動脈の狭窄により腎血流量が低下するために生じる高血圧で,小児の二次性高血圧の5~10%といわれている.
・急激な血圧上昇を認める場合は視覚障害や頭痛,意識障害,けいれんを呈するposterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)に注意が必要.カルシニューリンインヒビターやステロイド(特にパルス療法)の使用はPRESのリスクである.
・「小児期心疾患における薬物療法ガイドライン」「高血圧治療ガイドライン2019」「小児腎血管性高血圧診療ガイドライン2017」が利用可能である.血圧基準値は2017年に改変された米国小児科学会のガイドラインの基準値が広く用いられる.
●治療方針
A.腎実質性高血圧
小児の高血圧症の基準値は年齢,性別,身長により異なる.正常血圧の上限は13歳以上では120/80mmHgであるが,1~13歳の血圧90パーセンタイル値は平均的な身長の男児を例にあげると,1歳100/53mmHg,4歳105/65mmHg,8歳110/71mmHgであり,就学前~学童では収縮期血圧が100~110mmHgであっても血圧高値である可能性に留意して高血圧の診断を行う.
降圧薬はアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),カルシウムチャネル拮抗薬(CCB)が第1選択となる.
1.CKD,蛋白尿を伴う症例
蛋白尿減少効果やCKDの進行抑制効果も期待できるACEIやARBを単剤あるいは併用で使用する.効果が不十分な場合にはCCBを併用する.
Px処方例 ARB
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