診療支援
治療

巣状分節性糸球体硬化症
focal segmental glomerulosclerosis(FSGS)
張田 豊
(東京大学小児科学・准教授)

●病態

・巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は高度蛋白尿を呈し,しばしば進行性の腎機能低下を起こす.臨床像と特徴的病理所見から診断される.

・原因が特定できないが循環因子の関与が強く疑われる特発性(primary)FSGSと,何らかの明確な原因をもつ二次性FSGSに分類される.

・特発性FSGSはほとんどの症例でネフローゼ症候群を呈する.微小変化型ネフローゼに比べて難治性となることが多く,ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS:steroid resistant nephrotic syndrome)という臨床的診断名とオーバーラップする部分も多い.腎不全に至った場合に移植後再発を認めることがあり,患者血中因子が原因と考える根拠の1つとなっている.

・高度蛋白尿による体液貯留傾向が著明となると,難治性浮腫,活気不良,高血圧,腹部膨満,呼吸困難をきたす.感染症(腹膜炎,敗血症,肺炎,蜂巣炎,真菌感染症)や静脈血栓症,急性腎不全などの合併症に配慮する必要がある.

・二次性FSGSとしては遺伝性(FSGSの原因遺伝子は多岐にわたる),ウイルス性(HIVやパルボウイルスB19など),薬剤性(パミドロン酸など),残存腎(ネフロン数減少によるもの)などがあげられる.二次性FSGSはネフローゼ症候群を呈さない場合もある.

・FSGSと病理診断される小児患者,あるいは臨床的にSRNSと診断される小児患者の一部に,原因となる単一遺伝子変異が同定される.遺伝性の場合には腎外症状を有するものや特徴的病理像を呈するものがある.その他,発症年齢(乳児あるいは幼少期発症か)や家族歴(家族は軽微な腎外症状のみのこともありうる)などが遺伝性要因を疑うヒントとなりうる.

●治療方針

A.特発性FSGS

 小児期発症ネフローゼ症候群の5~10%がステロイド抵抗性である.また一部の症例ではステロイド治療に当初反応したり,部分

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