診療支援
治療

膜性腎症
membranous nephropathy(MN)
稲葉 彩
(横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター)

●病態

・膜性腎症(MN)は,成人ではネフローゼ症候群をきたす代表的疾患の1つであるが小児ではまれである.MNは特発性と二次性に分類されるが,わが国の小児では特発性が多い.

・近年特発性の原因として抗膜性ホスホリパーゼA受容体(PLA2R)抗体が報告され,わが国の成人患者でも陽性が多いが,小児の陽性患者はきわめてまれである.

・二次性MNはB型肝炎やC型肝炎,全身性エリテマトーデスなどの膠原病,薬剤性や悪性腫瘍によるものなどがある.

●治療方針

 最初に特発性か二次性かの鑑別を行い,二次性には原疾患の治療を優先する.小児の特発性MNはエビデンスの高い治療は未確立であり成人MNや小児IgA腎症への治療などを参考に行われている.

 ネフローゼ症候群を呈さない小児MNにはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が選択される.

 ネフローゼ症候群を呈する小児MNにはステロイドや免疫抑制薬を検討する.「ネフローゼ症候群診療ガイドライン2017」ではステロイド単独療法やプレドニゾロンとシクロスポリン(ネオーラル)の併用療法が推奨されているが小児でもこれらの治療が頻用される.プレドニゾロンの連日投与は成長障害が懸念されるため治療開始1か月後以降は隔日投与に変更し蛋白尿の量を参考に減量中止を目指す.プレドニゾロンとミゾリビン(ブレディニン)の併用療法も選択されるがミゾリビンは通常用量より高用量が用いられることが多い.

 小児では,シクロホスファミドの併用療法は性腺障害や発癌性が懸念され避けられる傾向にある.上記治療への抵抗例は成人同様にリツキシマブも考慮する(保険適用外).

Px処方例 下記の薬剤を症状に応じて適宜用いる.

➊ロンゲス錠(10mg) 開始量:1回0.07mg/kg(成分量として) 1日1回 (最大1回20mg)

➋ブロプレス錠(2mg) 開始量:1回0.2mg

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