●病態
・生後3か月以内に発症するネフローゼ症候群を先天性ネフローゼ症候群(CNS:congenital nephrotic syndrome)という.原因は,糸球体上皮細胞スリット膜に関連する分子の構造異常によることが明らかとなった.1998年に,CNSの代表的な疾患であるフィンランド型先天性ネフローゼ症候群(CNF)の原因遺伝子として,NPHS1が同定された.
・CNFは出生直後より高度蛋白尿をきたし,高度の浮腫を伴う.以下により診断される.
a)高度蛋白尿:血清アルブミン<1.0g/dL,蛋白尿≧2,000mg/dL
b)胎盤重量/出生体重比:0.25以上
c)母体の血清・羊水中のαフェトプロテイン高値
d)生後6か月以内は腎機能正常
e)先天性ネフローゼ症候群を呈する他疾患を除外
f)NPHS1遺伝子異常
●治療方針
ネフローゼ期,透析期,腎移植期の治療に大きく分けることができる.根本的な治療は腎移植であるため,長期の治療計画を立てて管理を進める必要がある.
A.ネフローゼ期の治療
十分な栄養摂取,甲状腺ホルモン・ビタミンの補充,抗凝固療法などを行う.
a)摂取エネルギー:1日100kcal/kg以上 経口摂取不良時には,経管栄養を併用する.
b)人血清アルブミン:1日3~4g/kg 必ずしも連日投与する必要はない.活動困難な浮腫,低アルブミン血症による嘔吐などの消化器症状出現や不機嫌,敗血症などの感染症罹患時および外科的処置の際はアルブミンを投与する.
c)レボチロキシン(チラーヂンS):TSHの値をみながら調節する
d)マルチビタミン:ビタミンの値をみながら調節する
e)アルファカルシドール(アルファロール):血清Ca値が正常範囲内になるよう調節する
f)ミネラル:Mg,Kなどの補給
g)ジピリダモール(ペルサンチン):1日5mg/kg 2回に分けて
h)ワルファリン(
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