診療支援
治療

腎性尿崩症
nephrogenic diabetes insipidus
小松康宏
(群馬大学大学院医療の質・安全学・教授)

●病態

・腎性尿崩症とは,尿濃縮障害により多飲・多尿をきたす疾患である.

・多尿に対し水分補充が不足すると高ナトリウム(Na)血症となるが,通常は,口渇刺激に対し飲水するので血清Na濃度は正常であることが多い.

・原因は腎臓の集合尿細管主細胞における抗利尿ホルモン(ADH)に対する感受性の低下であり,先天性と後天性がある.

・先天性腎性尿崩症の約90%は抗利尿ホルモンの受容体であるV2受容体の遺伝子異常であるが,アクアポリン2水チャネルの遺伝子異常も報告されている.多尿,多飲で気づかれることが多い.脱水になれば発熱,体重増加不良がみられることもある.

・成人発症の後天性腎性尿崩症の原因は,リチウムの副作用,低カリウム(K)血症や高カルシウム(Ca)血症,閉塞性尿路疾患の閉塞解除後などが多い.

・診断は3,000mL/m2/日以上の多尿を認め,血中AVPが低下していないことで診断される.

●治療方針

 脱水を防ぐために,十分な水分補充と尿量を減らすための食事・薬物療法を行う.先天性腎性尿崩症の乳幼児では,栄養状態と成長を経時的に評価する.

 「尿量=浸透圧物質排泄量÷尿浸透圧」の関係がある.浸透圧物質の摂取量を減らすため塩分制限と蛋白制限を行う.ただし小児では成長障害を招かぬよう注意する.

A.急性期の治療

 高度の脱水に対しては,高張性脱水の初期治療を行う.

B.慢性期の治療

1.溶質制限

 Na摂取量は1mEq/kg/日以内を目標とする.蛋白摂取量は年齢に応じた栄養所要量とし,過度の摂取にならないようにする.

2.サイアザイド系利尿薬

 遠位尿細管でのNa再吸収を阻害することで,尿Na濃度,尿浸透圧を上昇させる.また循環血漿量減少からレニン・アンジオテンシン系が刺激され,近位尿細管での水,Na再吸収が増加し,尿量が減少する.利尿薬の抗利尿効果だが,成人では10L/日の尿量が3L/日程度まで低下するといわ

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