診療支援
治療

ネフロン癆
nephronophthisis
杉本圭相
(近畿大学小児科学・主任教授)

●病態

・ネフロン癆は,末期腎不全に至る遺伝性の進行性嚢胞性腎疾患である.

・病態形成の中心が尿細管上皮細胞の1次繊毛の機能に関連する蛋白の異常であるため,尿細管機能障害の反映として,初期症状は多飲,多尿,尿最大濃縮能の低下,2次性の遺尿や成長障害である.一方で,病勢が進行した末期腎不全の状態で発見されることも多い.

・眼(網膜色素変性症)や顔貌・骨格異常といった腎外症状を合併し,診断の手がかりとなることがある.

●治療方針

 現時点では根本的な治療はない.腎機能の低下が進行する場合は,末期腎不全に準じた治療が行われ,最終的には腎移植が選択される.

A.生活指導

 規則正しい生活,適切な体重管理を指導する.高度蛋白尿や腎機能低下による浮腫が強くなければ,適度な運動も推奨され,安静を強いる必要はない.ネフロン癆は特に多尿,塩類喪失になる傾向があり,脱水予防のため,適切な水分摂取を推奨する.

B.食事療法

 指導の対象は,高血圧・浮腫・乏尿などの徴候を認める腎機能低下例であるが,小児では発育途上の点から,身体発育を妨げる可能性がある高度な食事制限は好ましくない.蛋白質摂取制限による腎機能障害進行の抑制効果は明らかではなく,推奨されない.

 しかし過剰摂取は避け,身長年齢の推奨量にすることが望ましい.一般的には厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年度版)に準じる.Stage 4~5で溢水,高血圧を認める場合は食塩制限が必須となる.思春期・青年期では「思春期・青年期の患者のためのCKD診療ガイド」,成人期であれば日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」を参考にする.

C.高血圧

 処方例にあげた薬剤のいずれかを用いる.ただし,高カリウム血症が存在する場合,症状を増悪させる可能性があり,ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は推奨されない.

Px処方例 下記のいずれか

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