Ⅰ.腎外傷
●病態
・小児の泌尿生殖器外傷のうち約半数が腎外傷であり,鈍的外傷と穿通性外傷に分類される.わが国においては,原因として転倒・転落,スポーツや遊びによる外傷,交通事故による鈍的外傷が多く(95%)を占める.
・小児は成人と比較して臓器の占有容積が大きく,それを保護する腹壁や肋骨が脆弱であるために,弱い外力でも腎外傷を起こしやすい.先天性水腎症,馬蹄腎,骨盤腎やWilms(ウィルムス)腫瘍などの腎疾患が腎外傷を契機に発見されることもある.
・小児は循環血液量が少ないため,成人にとっては少ない出血量であっても生命のリスクがあることを認識する必要がある.血尿は腎障害を疑う重要な徴候であるが,血尿の程度は必ずしも損傷の程度を反映せず,血圧低下が重症度や出血量の指標とはならないこともあるため,失血量はヘマトクリット(Ht)値で評価すべき点が成人と異なる特徴である.
●治療方針
A.検査
バイタルサインに注意しつつ,腹部超音波検査(US),造影CT,血液生化学検査,尿検査により外傷の程度を迅速に評価する.小児は年齢により血圧正常値が異なるので注意が必要である.急性期を脱してから腎実質障害の程度を評価するためにはDMSA腎シンチグラフィが有用である.
USは迅速簡便に施行可能で,特異度が高く有用であるが,感度は低いとされる.造影CTは,腎外傷の診断,治療,治療効果の判定すべてに中心的な役割をもつgold standardであるが,小児においては過剰な被曝を避ける配慮も必要であり,低線量CT装置があれば採用し,可能な評価はUS,MRIで行う.
B.腎外傷の分類
米国外傷外科学会(AAST)分類(1989年)あるいは日本外傷学会(JAST)分類(2008年改訂)が用いられる(表1図).
AAST分類でGrade Ⅰ~Ⅲ,JAST分類でⅠ~Ⅱ型では,最初に床上安静,バイタルチェックを含めた保存的