●病態
・帯下(おりもの)は,腟内の老廃物を排出し腟内の清浄度を保つ役割を担う.腟分泌物の増加や外陰部のかゆみは,腟内における何らかの炎症の存在を示唆し,小児婦人科領域で頻度の高い愁訴である.
・乳幼児期に外陰腟炎が発生する要因は,エストロゲン低値のため腟粘膜が薄く,腟内のデーデルライン桿菌が少なく腟の自浄作用が弱いこと,また肛門周囲の清潔が保てないことなどによる.
・一方,思春期以降では性的接触による感染症によるものを診断することが必要である.これについては他項を参照されたい.性交経験のない思春期女性では,カンジダ外陰腟炎や細菌性外陰腟炎がみられる.
●治療方針
外陰部の診察では,会陰と陰唇,腟入口,外尿道口周囲,肛門周囲の状態を観察する.会陰の両側方を軽く下方に広げると腟壁の下部を見ることができる.腟分泌物検査をする場合には,滅菌綿棒を挿入して培養検査を行う.腟内異物が疑われる場合には,直腸診が有効なことがある.
主症状は外陰部や腟入口の発赤,腫脹,瘙痒感,疼痛であり,局所所見や帯下の性状,腟分泌物の顕微鏡検査,培養検査などにより診断する.
A.乳幼児の外陰腟炎
腟内には種々の細菌が混在しているが,乳幼児の帯下はこれら常在菌による非特異性外陰腟炎が最も多い.上気道感染症に起因したものとして,鼻咽頭から手指を介して感染する表皮ブドウ球菌やA群レンサ球菌などがある.また糞便汚染による腸球菌や大腸菌などがみられる.
外陰部の衛生指導と抗菌薬の軟膏塗布によりほとんどが治癒する.治療に抵抗性の場合は,腟内異物や先天奇形,性的虐待などの可能性も念頭におき精査を進める.
Px処方例
ゲンタシン薬軟膏 1日数回 患部に塗布
B.思春期以降の外陰腟炎
1.カンジダ外陰腟炎
症状は外陰部の瘙痒感と帯下の増加で,時に外陰や腟の灼熱感,痛みを訴える.帯下は酒粕状であり,診断はカンジダの検出による.イミダゾール系