●病態
・脳実質の膿瘍.全体の2~3割では発症のきっかけが不明である.
・多くは副鼻腔炎・歯科感染(レンサ球菌や嫌気性菌),慢性中耳炎(左記に加え緑膿菌),頭部外傷(ブドウ球菌やグラム陰性桿菌),頭部手術(ブドウ球菌や緑膿菌),細菌性髄膜炎をきっかけに,菌が隣接した脳へ直接的あるいは間接的に波及する.
・チアノーゼ性心疾患では血中に入った菌が肺で除去されないため,そのまま脳へ移行して膿瘍が形成される(ブドウ球菌,レンサ球菌).
・主症状は,頭痛,発熱,嘔吐,けいれん,意識低下などである.
・MRI(乳幼児では鎮静必要)や造影CT(爆あり)が診断に有用である.
●治療方針
抗菌薬を長期投与する(8週程度).培養で検出しにくい嫌気性菌も同時にカバーする.真菌や結核が原因のこともあるが,ここでは頻度の高い細菌性の脳膿瘍について述べる.
A.原因菌不明の場合
基礎病変から原因菌を推定し,さらに嫌気性菌もカバーする(B.参照).
B.原因菌別の例
Px処方例 中枢神経系移行のよい薬剤を選択する.下記の➊~➎を用いる場合には➑も同時に併用する.➌のバンコマイシンでは年齢によって初期投与量が異なり,薬物血中濃度モニタリング(TDM)も必須なので,必ず「抗菌薬TDMガイドライン」「MRSA感染症の治療ガイドライン」などを参照する(細菌性髄膜炎由来については「細菌性髄膜炎」→,けいれんなどの対策は「てんかん」→,「熱性けいれん」→,「脳性麻痺」→,「急性脳症」→,「急性脳炎」→).
(レンサ球菌)
(ブドウ球菌メチシリン耐性)
➌塩酸バンコマイシン薬注 1回15~20mg/kg
1日3~4回 点滴静注
(ブドウ球菌メチシリン感性)国内には中枢移行のよいペニシリンがないためさまざまな考え方がある.
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