診療支援
治療

亜急性硬化性全脳炎
subacute sclerosing panencephalitis(SSPE)
細矢光亮
(福島県立医科大学小児科学・教授)

●病態

・亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は,麻疹ウイルスの脳内持続感染の結果生ずる,麻疹ウイルス変異株(SSPEウイルス)による遅発性中枢神経感染症(ウイルス性脳炎)である.

・麻疹罹患後,通常3~12年の潜伏期を経て知能低下や行動異常などの大脳徴候で発症し,その後けいれん,ミオクローヌス,運動性徴候が出現,進行して昏睡や後弓反張,さらに無言症,全大脳皮質機能消失をきたして死に至る.

・わが国では,麻疹ワクチンの接種率向上とともに麻疹発症者数が減少し,それによりSSPEの発生数は年間0~数例ときわめてまれな疾患となった.

●治療方針

 イノシンプラノベクス(イソプリノシン)の内服療法と,インターフェロンの脳室内投与療法の併用を行う.診断がつき次第,早期にイノシンプラノベクス経口投与を開始し,オンマヤリザーバーを設置してインターフェロンの脳室内投与を行う.

 イノシンプラノベクスは抗ウイルス作用と免疫賦活作用を併せもつ薬剤である.一般には50~100mg/kgを1日3~4回に分けて経口投与する.本剤はイノシンから尿酸に代謝される結果,血中および尿中の尿酸値の上昇がみられることがある.その他,肝機能障害,赤血球増加,血小板増加,消化管出血,尿路結石,白血球減少などの副反応が報告されている.

Px処方例

イソプリノシン錠(400mg) 1回2錠 1日3回 毎食後(体重30~40kgとして)

 インターフェロンは抗ウイルス作用をもつ薬剤である.インターフェロン(αまたはβ)100万~300万単位を週1~3回,髄腔内あるいは脳室内に投与する.副作用としては,発熱がほぼ全例でみられるほか,無菌性髄膜炎,髄液蛋白量の増加または減少,まれにアレルギー反応を呈する症例もある.また,オンマヤリザーバーを用いたインターフェロンの脳室内投与は,医原性の細菌性髄膜炎を引き起こす場合があるので十分注意する.

Px処方例

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