診療支援
治療

呼吸器系の訴え
psychosomatic symptoms of respiratory system
小柳憲司
(長崎県立こども医療福祉センター・副所長)

Ⅰ.過換気症候群

●病態

・発作的・不随意的に起こる過換気によって呼吸性アルカローシスが生じ,空気飢餓感,胸痛,嘔気,しびれ,意識混濁などの多彩な症状を呈する疾患である.

・通常は呼吸数が増えると動脈血CO2分圧が低下することで呼吸中枢が抑制されるため,過換気になることはないが,情緒不安定な状態では呼吸中枢が正常に機能しないことから呼吸が抑制されず,過換気を引き起こすといわれている.

・呼吸性アルカローシスは脳血管の収縮から意識混濁を,血清カルシウムイオン減少に伴う神経・筋の被刺激性亢進から四肢のしびれや硬直を引き起こす.運動・発熱などの身体的因子や,不安・怒りなどの心理社会的因子が引き金となりやすい.

●治療方針

A.発作時

 以前は過換気といえばペーパーバッグ法(紙袋を口に当て,呼気を再吸気することでCO2分圧上昇を期待する)が第1選択であったが,この方法によって窒息を起こす症例があることが知られるようになり,現在では行われなくなった.

 過換気状態の患児は,空気飢餓感によって「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖感に襲われ,その恐怖感から,さらなる過換気につながるという悪循環を示す.そのため最も重要なのは,患児を安心させることにある.今は苦しいかもしれないが,落ち着いてゆっくり呼吸するようにすれば必ず収まることを静かな口調で伝え,背中に手を当て,できるだけゆっくり呼吸するように促す.対応するほうが焦らないことが重要である.そうやってしばらく横に付き添っていれば,必ず発作は収束する.

B.再発予防

 どのような状況で発作が出現したのかを聴取し,同じような状況に置かれるのを避けること,発作が起こりそうなときには,その場から離れ自ら呼吸を整える(腹式呼吸を行う)ことなどを再発予防として教育する.

■専門医へのコンサルト

・発作を頻回に繰り返す場合には,日常生活に何らかの心理社会的ストレスを

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