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海外渡航者に帯同する小児の予防接種
水野泰孝
(グローバルヘルスケアクリニック・院長(東京))

A.海外渡航者への予防接種の基本概念

 成人,小児にかかわらず,海外渡航者への予防接種は目的に応じて以下の3つがある.

 a)Routine vaccine:自らの感染予防だけではなく周囲への感染を防止するために,主に小児期に実施される定期に接種するもの

 b)Required vaccine:入国時や留学時に予防接種済の証明書を要求されるもの(黄熱,MMRなど)

 c)Recommended vaccine:海外で流行している感染症に対して,自らの感染予防を行うために推奨されるもの(いわゆるトラベラーズワクチン)

 乳幼児の場合には渡航する時期までに接種可能な定期接種はすべて完了しておくことが大原則である.就学児で現地の学校に入学するような場合には,その学校から要求される予防接種を規定の回数行い,接種記録を作成する必要がある.

 日本の定期接種がすべて終了していても,国内未承認ワクチンの必要性など,現地の基準に満たないことがあるので,追加するものがないかどうかを事前に確認しておく必要がある.また要求された予防接種を行うだけではなく,可能であればこれまでの予防接種歴を一覧にした英文予防接種証明書の作成を行い,持参させることが望ましい.トラベラーズワクチンに関しては基本的に成人と同様で,渡航先や渡航期間によって推奨される予防接種を実施する.

B.推奨される予防接種

 予防接種の選択にあたっては3つの項目(渡航先,渡航期間,渡航目的)がポイントとなる.

 例えば,北米や欧州に渡航する場合,乳幼児であれば定期予防接種,就学児であればそれに加え入学時に要求される予防接種程度で十分である.一方で東南アジアやアフリカなどの開発途上国に渡航する場合には,上記に加え成人と同様に推奨される予防接種を選択する.特に両親のどちらか(または両方)が開発途上国の出身で,母国への帰省に帯同するような場合には,現地住民と

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