診療支援
治療

未熟児網膜症
retinopathy of prematurity(ROP)
本田 茂
(大阪市立大学大学院視覚病態学・教授)

●病態

・網膜血管の未熟性に基づく疾患で在胎週数34週未満,出生体重が1,800g未満の低出生体重児に起こりやすく,生後3~6週頃に発症する.

・高濃度酸素の投与がリスク因子の1つと考えられており,伸展途中の網膜血管を収縮させることで血管先端の閉塞を引き起こす.

・その結果,虚血に陥った周辺網膜から血管内皮増殖因子(VEGF)が過剰に産生され,病的血管新生が生じる.

・この新生血管からは出血や線維血管増殖が起こることもあるが,ほとんどの場合は途中で進行が止まり自然に治癒する.

・もし重症化すると,発達した増殖膜の瘢痕収縮による牽引性網膜剥離を起こして失明する可能性がある.

・わが国では厚労省分類と国際分類がともに用いられている(表1).

●治療方針

 未熟児網膜症治療の基本は,過剰なVEGFをコントロールすることにある.そのためには網膜血管の閉塞を予防する酸素投与の適正管理,VEGFを過剰産生する虚血網膜の間引き,そしてVEGFの直接阻害が行われる.

A.酸素投与の適正管理

 エビデンスとしては85~89%の酸素飽和度で未熟児網膜症の重症化が防げたとの報告があるが,一方で死亡率が上昇するため至適酸素飽和度の議論が進行中である.

B.網膜光凝固

 虚血網膜をレーザー光線で熱凝固してVEGFの過剰産生を抑制する方法である.現在,広くコンセンサスを得ている考えではStage 3において線維血管増殖膜が一定以上進んだ場合(あるいはplus diseaseを認めた場合)と,厚労省分類のⅡ型あるいは国際分類のaggressive posterior ROPと診断された場合に,網膜光凝固の適応としている.

C.抗VEGF療法

 VEGF中和抗体を眼内注射することでVEGF量を調節し,網膜症の進展を抑制する方法である.網膜の破壊を伴わない利点がある一方で,治療の効果が切れたときに再増殖をきたすリスクも指摘されている

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