終末期にはさまざまな症状が高率に出現する.これらの症状を迅速かつ適切に緩和することは,患児とその家族にとって残された大切な時間を安楽に過ごすうえで,きわめて重要なことである.
A.悪心・嘔吐
終末期において悪心・嘔吐は頻度の高い症状の1つである.終末期の悪心の原因は多様であり,しばしば複合的に作用する.必ずしも原因が明らかになるものではないが,悪心・嘔吐の病態生理に見合った対応および各薬物の作用機序を理解したうえでアプローチすることが望ましい.
悪心・嘔吐の薬物療法の中心は嘔吐中枢,CTZ(chemoreceptor trigger zone),前庭核,末梢の各神経レセプターへの作用をコントロールすることによる.
抗コリン作用と抗ヒスタミン(H1)作用を併せもつジフェンヒドラミンなどは,嘔吐中枢と迷走神経に作用することでほとんどの悪心・嘔吐に有効である.酔い止め薬としても小児に広く用いられており,比較的安心して用いることができる.
抗ドパミン(D2)薬は主にCTZに作用することで悪心を軽減する.ハロペリドール,メトクロプラミドなどが主に用いられる.錐体外路症状が問題になる場合は,血液脳関門を通過しないドンペリドンが代替薬となりうる.
多受容体拮抗薬としてはレボメプロマジンなどがある.広域制吐薬として,ほかの制吐薬が無効なときに力を発揮する.ただし鎮静作用を生じやすいので注意が必要である.
コルチコステロイドは腫瘍周囲の浮腫軽減などの作用により,腸閉塞や脳圧亢進に伴う悪心・嘔吐に効果が期待できる.副作用の観点から使用は最小限,短期間に留めることが望ましい.
Px処方例 下記を症状に応じて適宜用いる.
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