診療支援
治療

小児薬剤投与法の原則
川上純一
(浜松医科大学医学部附属病院薬剤部・教授)

A.小児薬用量の考え方

1.成人薬用量からの換算

 薬用量については医薬品添付文書の用法・用量が重要な根拠となるが,小児薬用量が記載されている医薬品は少ない.そのため,多くの医薬品は成人薬用量から換算して使用される.

 成人薬用量からの換算には,年齢,体重および体表面積を換算比とした算出がなされている.表1には代表的な換算法を示した.年齢や体重に基づく計算では用量を低く設定することが多いので注意が必要である.体表面積を換算比とする方法は比較的有用である.体表面積による補正に近似したvon Harnackの換算表(表2)も繁用されている.

 参考として,体重と身長から体表面積を近似計算するにはDubois式がある.日本人における年齢と体重の目安を表3に示した.

 Dubois式:体表面積(cm2

  =体重(kg)0.425×身長(cm)0.725×71.84

2.小児における薬物動態

 薬物動態は吸収・分布・代謝・排泄の過程から成り立つ.小児においては,これらへの影響因子が成人とは異なる(表41).消化管吸収については,新生児では胃内のpHや排出速度を反映して遅い傾向にあるが,未熟児を除いて吸収が悪いということはない.分布に関しては,新生児では血漿蛋白質量が少ないため蛋白結合率が低い場合がある.代謝については,代謝酵素によっては新生児のときから活性の高いものと生後に発達するものがあるため,年齢の影響は複雑である.腎排泄も,生後は未発達であるが,比較的早く発達して乳児レベルに近づく.

 薬物の血液中からの消失速度に及ぼす年齢の影響は,各薬物の体内動態特性にも依存するため薬物により異なる(表51).特に代謝酵素に関して発達過程での相違が大きく,なかには小児期に成人よりも活性が高い場合もある.

B.内服薬の剤形の選択

 乳幼児期には散剤や内用液剤(シロップ剤など)が繁用され,小学生にな

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