今日の診療
治療指針

感染症法の概要について
outline of infectious disease control law,Japan
四柳 宏
(東京大学医科学研究所教授・先端医療研究センター感染症分野)

 日本では1897年に伝染病予防法が施行され,11種の法定伝染病,2種の指定伝染病,13種の届出伝染病を定め,隔離・治療・消毒・予防接種をはじめさまざまな対応を定めていた.しかし,それぞれの疾病に関する知見の集積,治療薬の開発も進むなか,時代に合わない内容となってきたため,1999年(平成11年)に廃止され,かわって「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号.以下,感染症法)が施行された.

 感染症法では,他者への感染力,感染した場合の重篤度などによって感染症を1類から5類に分類している.また,このほかに今後パンデミックを起こしうる新型インフルエンザ等感染症,今般の新型コロナウイルス感染症にも一時適応された指定感染症,これらのいずれにも当てはまらないが対応が必要と思われる新たなものを対象とした新感染症に分けられている().

A感染症法に基づいた疾病の届け出

 届出の対象となる感染症には,すべての医師が届出を行う感染症(全数把握)と,指定した医療機関のみが届出を行う感染症(定点把握)がある.疾患の一覧は厚生労働省のウェブサイトを参照していただきたい.

 全数把握の対象となるのは1~4類の感染症のすべて,5類感染症の一部である.新型コロナウイルス感染症(新型インフルエンザ等感染症として記載がある)もこの対象である.診断を行った際に,直ちに電話もしくはファクシミリで最寄りの保健所に届け出て,後日郵送で届出書を提出する.

 定点把握の対象となるのは全数把握対象でない5類感染症の小児科定点疾患,インフルエンザ,眼科定点疾患,性感染症定点疾患,基幹定点疾患である.定点として指定された医療機関が対象の感染症の発生状況を指定の期間(週または月)ごとにとりまとめて,保健所に届け出る.

 定点把握疾患に関してはを参照されたい.

B新型コロナウイルス感染症の扱い

 新

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