今日の診療
治療指針

心不全(外科的治療),植込み型補助人工心臓・心臓移植
surgical management for heart failure:ventricular assist device(VAD)and heart transplantation
絹川弘一郎
(富山大学大学院教授・内科学第二)

GL2021年改訂版重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン

◆病態と診断

・植込み型VADまたは心移植の対象となるのはステージDに分類される重症心不全である.

・ステージDとはβ遮断薬,ACE阻害薬またはARBまたはアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI),ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA),SGLT2阻害薬の標準的薬物治療が行われ,適応があればイバブラジン投与や心臓再同期療法を施行されたあと,NYHA心機能分類Ⅲ度以上の症状が改善しないものを指す.

・いかなる基礎疾患を有する心疾患もステージDとなりうるが,VADや心移植の適応となる心疾患には一定の制限がある.

・ここに詳述するスペースはないが,おおむね全身性疾患や多臓器不全を伴わない心臓に限局した病態と考えるとよい.

・さらに心臓移植には年齢の上限が設けられている.

・最近,移植適応外の植込み型左室補助人工心臓(LVAD:left VAD)治療(DT:destination therapy)が保険適用となり,その基準について詳細な解説がなされている(補助人工心臓治療関連学会協議会ホームページまたはCirc J 85:1906-1917,2021を参照)

◆治療方針

A植込み型LVAD(BTT)

 植込み型LVADの適応には,心臓移植までのブリッジ使用(BTT:bridge to transplant)として植込み型LVADを適用する場合,最初に心臓移植の適応検討を移植実施施設において行い,日本循環器学会心臓移植適応検討部会の適応判定を受け,日本臓器移植ネットワークに登録するのが原則である.

 現在適応となっている植込み型VADはすべて連続流タイプの左心補助用であり,左室心尖部脱血上行大動脈送血(Jarvik2000は下行大動脈送血も可能)である.右心補助用の植込み型VADはまだない.移植適応患者のうち静注強

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