頻度 割合みる
治療のポイント
・心膜の炎症が原因で,ウイルス感染が誘因となることが多い.胸痛,心電図所見などから心膜炎を疑った場合,心エコーによる心嚢液確認が病態予測に有用である.
・安静と非ステロイド性抗炎症薬投与で経過をみて,自然治癒することが多いが,20~30%に再燃や収縮性心膜炎への移行がみられる.
・収縮性心膜炎をきたすと全身倦怠感,浮腫,頸静脈怒張を認める.塩分制限と利尿薬以外に心膜切開術の適応を検討する.
◆病態と診断
A病態
・心膜は,臓側心膜と壁側心膜からなり,心臓と血管を包んで心嚢状の形態を呈している.心膜腔内には,生理的な心膜液が10~50mL存在している.心膜炎は心膜や心膜腔の炎症により心膜液の貯留をきたす疾患である.心膜液が大量になると心膜腔の内圧により心臓の拡張が障害され右心系への血液還流が減少し,心拍出量や血圧の低下につながる(心タンポナーデ).
・心膜炎の原因は,ウイルスによる感染が最も多く,特発性(原因不明),悪性腫瘍,自己免疫疾患,代謝疾患のほか,外科手術後や放射線治療後などの医原性の頻度も高くなっている.
・原因疾患の治療と抗炎症薬投与が治療の基本で,自然治癒することが多いが,再燃(20~30%)や収縮性心膜炎への移行の可能性もあるため注意して経過観察が必要である.
B診断
1.診察所見
・吸気時に前胸部痛を認めることが多く,体位で症状が変化する.ウイルス感染が原因の場合は発熱や全身倦怠感を伴うことが多い.心筋炎を併発する場合,持続的な強い胸痛や心筋逸脱酵素の上昇を認める.
・聴診では,心膜摩擦音が特徴的であるが,炎症の状態で変化するためいつも聴取できるわけではなく,心膜液が増えると心膜摩擦音は消失する.
2.検査所見
・採血で炎症所見(白血球増多やCRP上昇)や心筋炎合併の評価のため心筋逸脱酵素の確認を行う.誘因となったウイルス感染の診断はペア血清による抗体価の